翌日 あの子が退院するはずの日でした。
なんとなく 昨日の様子が心配だったので 猫の抜歯や麻酔を調べてみました。
やはり 抜歯をしたほうがよいかどうかは慎重に考えなければならないようです、老齢猫の場合はなおさらのようです。
けれども もう終わったのだから  午後には迎えに行くのですが、心配していました。

お昼過ぎに電話がありました。
女獣医が
「昨日 口をあけて呼吸をしだしたので こちらにはICU(酸素室)の設備がないので 大田の本院に送りました。
(この病院のホームページには ICU設備があると書いてありますが、実際には遠く離れた本院に容態の悪い動物を搬送していたのです)
まだ出血が止まらないので このままでは危険なので、出血を止める手術をしなければなりません。
それには麻酔が必要なので、麻酔の許可と輸血も必要なのでその許可のために電話しました。」
私は もうびっくりしてしまって、
不安があたってしまった、
「それで 麻酔はさめたのですか?」と聞いたら
「麻酔はあの後覚めました。行かれますか?」
もちろん行くと答えました。
ああ 大変なことになってしまった、あんなに麻酔が覚めにくかったから 今度は 万一ダメかもしれない。
とにかく早くあの子に会いたい!
女獣医は「”それでは” 私も行きます。」と言いました。

病院の住所を聞きすぐに出かけました。
車の運転は苦手で、出雲から西のほうへはほとんど行ったこともないのですが、とにかく国道を大田に向かって車を走らせました。
病院について しばらく待って あの子に会うことが出来ました。
あの子は酸素室に入っていました。
私は もしかしたら 万一のことがあれば これがあの子に会える最後かもしれない と思って何度もあの子の名を呼びました。
私は多分 色々質問したと思います。
女獣医が「止血は 麻酔をかけて 出血している血管を焼く、どこの血管から出血しているか分からないので  とにかく出血していると思われるところを手探りでやる、
特にあぶない血管はない場所だ」
その説明で血管を焼くことは心配ないようだけれど 麻酔のことがとても不安だったので、「部分麻酔はできないですか?」と聞いたら、
「それではショックを起こす」ということだったので 仕方がないと思いました。
その日 午前に麻酔のことを調べていて 麻酔には2通りの方法があり吸引が安全らしいと分かっていたので、
手で口を覆って「こういう麻酔ですか?」と聞いたら
「注射で この場合は注射がいい」ということでした。
それでこれから輸血をするというので「輸血はしなければいけませんか?」と聞いたら 「まず 輸血をしてから手術をする」 というので  突然のことで 輸血の知識などほとんどなかったので ますます不安になりました。
一体どうしてこんなことになってしまったのだろう?
ただもう引き返すことが出来なかったので「お任せします。」というしかありませんでした。
このまま 血が止まってくれないかと願っていました。
そのときに院長と初めて会いました。
何を話したかは覚えていません。
多分何も話さず ただ「よろしくお願いします。」と言うだけだったと思います。

輸血の準備の間 待合室で待たされました。
中でバタバタと何人か動く気配が  血を採られる病院の猫の大きな泣き声が聞こえました。
しばらくして 静かになりました。
女獣医がやって来て、「元気のよすぎる猫で 麻酔を掛けてとった」と言いました。
「あの程度の出血でこんなことになるとは思わなかった。」とも言いました。
私は 「大田の病院に運ばれたのは 一体いつの話ですか?」と聞きました。
この病院は 看護婦は2つの病院掛け持ちで 大田から毎日 出雲の病院へやってくるようです。
また院長は平日は大田の病院、日曜日は出雲の病院とフルタイムで働いて 自転車操業?のような病院だったのです。
その看護婦が大田に帰る時の 昨夜のことでだったのです。
私は「昨日面会に行った時はぜんぜん心配なことは言われなかったのに」と言ったら
「心配をさせてはいけないと思って言わなかった」と言っていました。
心配させない、といったって こんな大事なことを翌日のお昼過ぎてから知らせてくるなんて、しかももうこのままでは危ないという時になって
(心配させてはいけないからと抜歯手術の危険性も何も話さなかったというのでしょうか?)
「もっと早く知らせてほしかった」と言いました。
「もし 今度 麻酔からさめなかったら ダメですか?」
そうだと言っていました。いつもと同じ能面のような無表情な顔でした。

もうしばらく待っていたら 「輸血を始めたから」と中へ呼ばれました。
そのときは あの子は 輸血の管がつながれていたのですが 思ったより元気そうに見えました。
猫の血液型は大体合うこと、 輸血はゆっくり、ゆっくり、と入れるので 時間がかかること、もし血が合わなければ 早い段階ででる、 どうも良さそうだということでした。
しばらくあの子を見ていました。
うずくまって 口にガーゼが挟んであります。
なんとなく血が止まっているように見えて「血が止まったんじゃないだろうか?」と聞いたのですが、
「いや 止まっていない」ということでした。私は このまま血が止まったら輸血なんかしなくていいのに、と思ったのです。
輸血が終わるのは夕方になるそうです。
「どうしますか?」と聞くので
「輸血が終わってからだったら 手術は夜になりますか?」
私は もっと近かったらな と思いましたが 一応輸血はうまくいっているようなので 自宅に帰ることにしました。
(遠くの病院へは連れて行けないからと市内の病院へ連れて行ったのに 結局山を越えてこんな辺ぴなところへつれてこられてしまった!私はあの子の不運を嘆きました。)
女獣医は「私も 診察があるから 帰ります。」と言いました。
私は 何か変わったことがあったら 出来るだけ早く連絡をしてもらえるよう頼んでから帰りました。

夕方 女獣医から電話がありました。
輸血が無事終わったこと、血が止まったので 止血手術は中止したことでした。
輸血したことで 血を止める成分が働いたのだろうということでした。
私は手術をされなくて本当にホッとしました。
これでもう麻酔の心配はない。

その後のことですが、翌日にはえさを食べたのだそうです。(後で分かったのですが、ほんの一口だったそうです。)
まあ一安心だと思ったのです。
翌 金曜日朝連絡があり、「良さそうなので 今朝 こちら(出雲)に戻ってきている、 面会ができます。」と言うことでした。
私は ずいぶん早く帰ってきたな、本当によくなったのだろうかと思って 午後に病院に行ってみました。
あの子は おりの中で うずくまって あまり様子がよくなさそうに見えました。
私は「輸血のときのほうが元気そうに見えた」と言いました。
今日はまだ食べてないそうです。
まだ心配だなと思いました。 レントゲンでも水がたまっていなかったと言っていました。


これで月曜日に退院だったら  費用はいくらとか言いました。
私は こんな時に費用のことなど持ち出されてびっくりして、
「今は 費用のことなんか 全然考えられないわ、とにかくあの子が良くならないと 」と答えました。
そのときは とにかくあの子が元気になること、まだまだ心配で他のことなど考えられなかったのです。


M動物病院へ


ペット医療ミス(高齢猫の手術、麻酔、抜歯、輸血の危険性)へ

 


以前 新聞で 作家のエッセーだったと思うのですが
猫に輸血が必要になったそうです。
もう一匹同居猫がいて 当然その子の血をもらうことにしたのだそうですが
血を提供した猫がそのために死んでしまったのです。
その後しばらくして後を追うように輸血されたほうの猫も死んでしまったそうです。
結局この人は 輸血で2匹とも亡くしたのです。
とてもショックな内容でいつまでもおぼえていました。

それで 輸血の後 電話で 「血をくれた猫は大丈夫でしたか?」と聞いたのですが、
女獣医が 「あれは 丸々と太った病院の猫だから」 と 何の配慮もない返事がかえってきました。

今回のことで 輸血のことを調べてみたのですが、
やはり 輸血がきっかけで そういう輸血用の動物の存在を知り 心を痛める人たちがいるようです。
アメリカのある大学では そういう動物のケアがきちんとされていて 学生たちが責任をもって動物たちの相手をして 一定期間で役目を終えた動物たちは 一般家庭でその後育てられるそうです。

もうずっと前になりますが、あの子の避妊手術をしてくれた先生、もう亡くなられたのですが、
病院の動物たち、入院している子たちも また訳ありで病院にいる子たちも 散歩や 猫は病院内で自由にしてときちんと配慮されていました。
他の病院ではどうでしょうか?動物たちのことを考えているのでしょうか?


 


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